クラウドファンデイングでSYRINX(シュリンクス)のコンパクト財布「Hitoe Fold」シリーズ、と「Hitoe L-zip」シリーズは記録的な売り上げを達成しました。(SYRINX公式HPでは、2021年6月の時点で合計3億円の資金調達を記載)
スマートシンプルの究極ともいえる二つの財布ですが、商品を提案しているSYRINX設立者の佐藤宏尚(さとうひろたか)氏がどんな人物なのか知っている方は少ないでしょう。
そこで今回は佐藤氏がどんなキャリアを経てSYRINXを設立し、クラウドファンディングを成功に導いたのかを調べてみました。
疑問
- SYRINXってどんな財布があるの?
- 値段は?
- 評判は?
- どんな人がSYRINXの財布をつくったの?
- SYRINXがクラファン で成功した理由は?
では、さっそく回答です↓
【写真つき】究極のスマートシンプル財布
SYRINX(シュリンクス)はセンスある風合いのレザーを駆使し、シンプルな商品を実現しています。
百聞は一見にしかず。
代表的な商品を3つピックアップしました。
二つ折り財布 Hitoe Fold Liscio (17,600円)
カードとレザーの留め具を使用して財布を閉じる構造を実現した財布。
カードとコイン入れを隣り合わせにし、両者の間の可動域を活かして開閉しています。
手ぶらで出かけることを目的として、究極にシンプルなデザインに仕上がっています。(レビュー|Hitoe Fold Liscio)
二つ折り財布 Hitoe Fold Less Foschia (33,000円)
キャッシュレス時代に合わせ、前述した「Hitoe Fold」シリーズをさらに薄く進化させた財布。
個人的に「Hitoe Fold」シリーズが財布形状の極致だと思っていました。
そこにきて更なる進化。SYRINXの提案には度肝を抜かれてばかりです。
長財布 Hitoe L-zip L-Liscio (19,800円)
L字ファスナーの長財布。カードとコインが重ならないよう、空間を満遍なく活用しています。
ファスナーを二つ設けて使いやすさを向上させているのも嬉しいポイント。
【価格】財布は14,300~33,000円
SYRINXの財布の価格は17,600~33,000円。
以下に財布と価格をリストアップしました↓
価格
- Hitoe Fold Aria Foschia 33,000円
- Hitoe Fold Less Foschia 33,000円
- Hitoe L-zip L Liscio 19,800円
- Hitoe Fold Liscio 17,600円
【評判】センセーショナルなデザイン
SYRINXの代名詞とも呼べる「Hitoe Fold」に関してですが、わたしもブログや公式ホームページでたくさんの口コミを確認しました。
当然ながらデザインには満足と感動のレビューで埋め尽くされていました。
また、国内の熟練の職人さんが作り上げている財布ということもあり、品質の高さもサティスファイ要因の一つに見えました。
たくさんのユーザーが「Hitoe Fold」に感動していることがわかります。
マイナスな口コミ
一方、
- 財布を閉じるとき、レザー留め具をカードに引っ掛ける動作に慣れが必要
- 収納カード枚数が少ない時、カードポケットからカードが滑り落ちやすい
- コイン収納時のジャラジャラ音
など、わずかに使い心地に関して不満の声も見かけました。
使用方法にはコツと制限があり、それに慣れる必要がある財布といえるでしょう。
わたしの私見ですが、「Hitoe Foldのデザインに感動し、そのデザインのためにある程度の不便を許容できる」という人にこそ向いている財布だと思いました。
ちなみに、わたしも「Hitoe Fold Liscio」を使用しています!↓
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【レビュー】スマートシンプルの極致 SYRINX Hitoe Fold
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SYRINXとは
ここからはいよいよSYRINXについての解説です。
まずは、短い要約です。
SYRINX(シュリンクス)とは
建築事務所を運営する建築士、佐藤宏尚(さとうひろたか)氏が2016年に設立したレザーブランド。
大人気のコンパクト財布「HItoe Fold」シリーズを展開しています。
見るもの全てを感動させる、細部まで論理的に突き詰められたシンプルなデザインは必見です。
また、商品ページの説明が非常に巧みで、ホームページも思わず見惚れます。
「一流建築士がレザーを扱ったらどのようにプロデュースするか?」を体現しています。
SYRINX設立者の建築家としてのキャリア
SYRINX(シュリンクス)の財布「Hitoe Fold」をご存知の方は多いかと思います。
しかし、実際にどのような方が作ったかを知っている人は少ないのではないでしょうか?
そこで、この機会に一流建築士の佐藤宏尚氏を追ってみました。
と、その前に、まずは出身地です。佐藤氏は1972年に兵庫県で生まれています。
一流建築士
1996年に東京大学建築学科卒業後、1998年に東京大学大学院修士課程を修了。
その後は総合建築設計事務所の「プランテック」で3年間のキャリアを積んでいるようです。
退職後は自ら佐藤宏尚建築デザイン事務所を設立。
一坪のスペースからキャリアを築いていきます。
感動する建築物
設計した多数の建築物で「住宅建築賞」、「グッドデザイン賞」、「日本建築学会・北陸建築文化賞」、「JCDデザインアワード」、「東京ビジネスデザインアワード」など、数々のデザイン賞を受賞しています。
個人的に感動した建築作品は「空からのメッセージ」です↓
デザインで問題を解決
都心部は住宅が密集し、日当たりがわるい家になりやすい傾向があります。
ほとんどの家は天窓を設け、日光を取り入れて自然光を確保しています。
「空からのメッセージ」も天窓を設けている点で同じ解決手法に見えますが、佐藤氏は工夫を加えてマジックを起こします。
特殊な天窓と鏡を使用し、日光が交錯するギミックを作り出したのです。天気や時間帯によって部屋の表情もかわる優れたデザインです。
デザインってすげぇ
いや〜、羨ましいです!!
「どんな人生を送ったらこんなカッコいい家に住めるんや!?」って素直に思いました!(笑)
こちらの創作で「Design for Asia Awards(Grand Award for Category, Merit Award)」を受賞しています。
社会問題を建築とデザインで解決している好例ですね!
そのほかにも商業施設、オフィス、そして住宅といった多数の建築物を手がけています。気になる方はこちらをチェックです!
SYRINX設立の背景
SYRINX佐藤氏の建築家としてのパワフルな成果物が見れました。
しかし、どうやら佐藤氏は建築デザインをこなす一方で、プロダクトデザインにも熱を入れていたようです。
その一つが、自ら設計した空間にマッチした、革ボディのスピーカーです。
このスピーカーは澄み渡る音を発したものの、革で作る際に大量の切れ端が余る問題に直面します。
そんな理由もあり、名刺入れ「TSUTSUMU」のデザインに取り組んだそうです。
そして、2016年にはレザーブランドSYRINXを設立。
数年後にコンパクト財布「Hitoe Fold」がクラウドファンディングで大成功をおさめます。
クラファン成功要因は2つか!?
2021年6月の時点で、クラウドファンディングで合計3億の資金調達に成功したことを、SYRINXは公式ホームページ上で報告しています。
中でも「Hitoe Fold」シリーズは、プロジェクトの度に5,000万円違い資金を集めています。
わたしも財布を販売していた人間として、成功した要因に興味をもちました。
そしてわたしなりに考え、(稚拙な文章になりましたが、)まとめてみました。
成功の大きな要因は2つあると考えています。
成功要因
- プレゼン力
- 「機能性」よりも「デザイン」を重視
1. プレゼン力
SYRINXの最も強力な武器の一つがプレゼン力でしょう。財布の魅せ方を、完全にアップデートしています。
SYRINXのクラファンプロジェクトを、一度でも目にしたことがある人は感じたかもしれません(見たことが無い人にリンクです→「Hitoe Fold Less プロジェクト」)。
強力なプレゼン力で見る人の心を、半ば強制的に突き動かしてきます。
財布に興味がなくても、「なんや、この美しい財布は!?!?!?」と見惚れます(これがマインドコントロールか!?)。
写真に感動"させられる"
まず商品写真ですが、全ての写真が美しいアングルと色合い(SYRINXがイタリアンレザーにこだわる理由もこの色合いにあると思います)で撮影されています。
SYRINX佐藤氏のプロフィールを確認すると、もともと写真撮影が趣味のようです。
相当なこだわりを持って撮影されているのが伝わってきます。
文章が知的で分かりやすい
そして、商品説明文ですが、端的かつ明瞭に商品の良さが主張されています。
言葉の一つ一つが知的な取捨選択の繰り返し。
商品のデメリットも上手く辻褄を合わせ、ストーリーに落として込んでいる点もポイント。
思考停止で読むと、「これは良い!」と脳が誘導されていく感覚に陥いります。危ない危ない!(そう言いながら、わたしは購入していました。笑)
賞アピール
さらに、各デザイン賞の受賞や特許権の取得アピールまで行われています。
正直な感想を言うと、それらの賞や特許がどれだけの価値があるか、定かではありません(スミマセン!!(汗))
しかし、深く考えなければ、「お!凄いな!」と思わせる雰囲気作りがされています。(私も特許権の取得経験があるから感じることですが、)
プレゼンモンスター
そもそも佐藤氏は、建築デザインの分野で数々のデザインコンペティションに参加されています。
つまり、デザインという定性的(定量的な部分も多分にあると思いますが、)な世界において、優位性を審査員に伝えることを生業の一つとしているのです。
優れているデザインも、それが伝わらなければ何の意味もないことを身を持って理解されているのでしょう。
このプロデザインの世界で鍛えられたプレゼン力です。
われわれシロウト消費者に「良さ」を伝えることは、佐藤氏にとって赤子の手をひねるように簡単なことかもしれません。
2. 「機能性」よりも「デザイン」を重視
財布「Hitoe Fold」(特に初代)は、おそらく財布界でもっともデザインを重視して作られた財布だとわたしは分析しています。
まず近年のトレンドとして、優れたデザインのモノが高い注目を浴びてきました。
身近だと、アップル、バルミューダ、そして無印良品などの製品が挙げられます。(ルッキズムが問題になるなど、近年は何でも見た目が重視されている傾向にあります)
私は過去に財布の販売経験があるのですが、実は財布でも見た目を重視して選ぶ方が多くいました。
プロによるプロデザインの追求
おそらく、SYRINX佐藤氏はこのユーザー層に目を付けたのだと想像しています。
そして、財布「Hitoe Fold」は、「財布としては最低限機能する範囲で、シンプルなデザインを突き詰めるとどうなるのか?」を徹底的に体現して製作されました。
例えば、財布の開閉に必要だと思われていたファスナーやホックボタンすら排除し、カードとレザーの留め具を使用して財布を閉じる構造を考案しています。
私も「Hitoe Fold」を所持しており、使った経験から言うと、この新たな留め具機能は決して使いやすくはありません(かなりセンシティブ)。が、見ての通り、デザイン性は抜群です。
別の例として、立体的な縫製が施されたカードポケットとコインポケットも挙げられます。
空間を無駄なく使用しており、厚みと横幅が揃っていることから、とても美しく見えます。
しかし、硬貨を入れて持ち運ぶと、音はジャラジャラ鳴り響きます。
そしてカードの収納枚数が少ないと、財布を開いているときに滑り落ちそうになります。
このようなデメリットもありますが、財布としてはキチンと機能しています。何よりデザインが抜群に良いのです。
他にも、明らかにデザインを重視したポイントが複数見受けられました(文章での説明が大変なため、割愛しますが、)。
”ユーザー目線”は思考停止だった!?
以上、ここまで長々と、財布「Hitoe Fold」が如何にユーザー目線を排除しながら、デザインを優先させてきたかを記しました。
冷静に考えれば、デザインをする上でこのデザイン重視の決断の数々は驚異的。
しっかりとしてロジックを通さなければ、「ユーザーフレンドリー」という常識的な考えが邪魔してくるからです。
財布にデザイン性を求めるユーザー層がいることを確信し、驚異的な論理思考からデザイン重視の財布を完成させ、市場に問いかけた訳です。
SYRINX佐藤氏は見事、仮説通りに消費者を満足させたことがわかります。
クラファンを成功させたいなら参考にしたい!
以上、SYRINX「Hitoe Fold」がクラファンで記録的な成功を納めた要因をまとめてみました。
クラファンをこれから実施する方は、十分に市場分析と思考実験を繰り返し、プレゼンテーションに力を入れることで、成功率を挙げていけそうです。
他にも、「黄金比を駆使したロジカルデザイン」、「細部まで寸分の狂いのない設計」など、SYRINX「Hitoe Fold」の成功要因はあったと思います。
が、財布界にインパクトを残した新規性の観点から、先に挙げた2つの要因が大きいと結論付けました。
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【レビュー】スマートシンプルの極致 SYRINX Hitoe Fold
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【店舗】公式ネットショップ
SYRINXは実店舗がありません。購入を検討されている方は公式オンラインショップがあります!
ちなみに、「商品を購入前にサンプルを確認したい」という方もいらっしゃるかと思います。
ご心配はいりません。SYRINXは指定住所へサンプル品を郵送するサービス「どこでもショールーム」を提供しています。(負担金は実質送料のみ。)
詳細が気になる方は活用してみて下さい!
【まとめ】今後も目が離せない!
SYRINXは、2020年に楽天やアマゾンなどのEC大手から撤退し、自社サイトとSNS配信によって顧客をつかむ戦略に舵をきっています。
EC大手から撤退した理由として、EC大手のシステムは広告費によって検索上位商品が決まってしまうことを挙げています。
これは商品を検索するユーザーの満足度を下げると同時に、店舗側も不要に広告費が搾取される原因になると佐藤氏は懸念。
さらに、商品ページが雑多な点もブランドの良さを伝えるために不十分に感じたそうです。(「NewsPicks」の佐藤氏のコメントから)
D2CブランドとしてSYRINXがユーザーとどのような信頼関係を築き、どのような製品を販売していくか、今後も目が離せません。
SYRINXというブランドを知れば知るほど、メッセージ性の強いブランドに感じました。
まさに表現者のブランドといえます。